五稜鏡記

写真機についての感想、主にKマウント機。

Kマウント機のロードマップに関する覚え書き2016年6月版

K-70HD PENTAX-DA55-300mm F4.5-6.3 ED PLM WR RE が正式発表になりました。K-3II と一部スペックが被るエントリー機という位置づけや、電磁絞りに対応したKAF4マウントの採用など、K-1 で出せるものは全部出しきってしばらくは鳴りを潜めるだろうという予想を打ち破る今回の発表。デジカメ市場が縮小し各社投資を減速させていきいそうな状況で、逆張りしてシェアを取っていこうという戦略を感じさせられます。

某掲示板で知ったのですが、親会社であるリコーの株主総会招集通知の封筒に、K-1の紹介が載っていました。GRII ではなく K-1 を載せてきていることから、リコー本体がペンタックスブランドに力を入れているという株主へのメッセージになっています。リコー本体の上層部にペンタキシアンがいるのか、株主担当部署にいるのか、広告担当部署にいるのか、リコーイメージングの側から親会社に働きかけたのか、株主だったら総会で質問してみたいぐらい興味があります。株主総会招集通知の封筒に印刷するというのは、印刷はリコーの自社領域だとしても、版下を作って内容をチェックして(株主相手に誤植は許されない)とそれなりに手間をかける必要があります。私は似たようなことをしていた経験が過去にあり、一般の人よりもその重みというのは何倍にも感じてしまうのですが、ペンタックスブランドにとって大変喜ばしいことだということは強調しておきたいです。

そんなわけで、K-1 が渾身の一品になっていて販売が好調なこと、K-3II の立ち位置をあやしくさせるような K-70 の投入、親会社であるリコーの前向きな姿勢。2011年10月にリコーがペンタックスブランドを買収してから4年半、ブランド再生の地道な努力が花開いてきたように感じながら今後のボディのロードマップを予想してみたいと思います。

 K-70 の情報が最初に出てきた時の記事です。

この記事の中で、K-S1 の後継として K-50 をリファインしたボトムライン機を予想していたのですが、実際に出てきたのは K-S2 の上位後継でした。現在 K-S1 はすでに払底に近い状態で K-S2 はこれからフェードアウトしていくでしょう。当面、販売価格から見れば、K-S2 を実質ボトムラインにして、K-70 を最新入門機、K-3II を中級機、K-1を上級機の扱いにするのではないかと思われます。K-70 の次に出てくるのが、K-3II の後継でしょう。来年2月のCP+で発表して春に販売開始のタイムスケジュールが想定されます。

K-1 や K-70 での技術を反映させながら、APS-Cの利点を素直に追求する方向の商品企画になりそうです。手ぶれ補正の向上・連写速度の向上・像面位相差の活用によるAF能力の向上あたりでしょうか。そのほか K-3II 登場時点よりも使い勝手の面で細かい改良が施されているため、そのあたりも全部込みの機種となりそうです。全部込みにしないと、K-70 との差別化に苦労するという事情もあります。

・画像処理エンジンPRIME IVによる処理速度の向上
・手ぶれ補正SRIIの搭載で5軸5段(5.5段?)の補正
・AFシステムSAFOX12によるAF範囲の拡大
・ライブビュー時の像面位相差AFとコントラストAFのハイブリッドAF対応
・透過型ファインダー内表示
・ISO102400対応
・スマートファンクション搭載
・リアルレゾリューションシステム動体補正のONOFF可能
・アウトドアモニター及びナイトビジョンレッドモニター対応
・アシストライト搭載
・明瞭コントロール及び肌色補正搭載

K-3II でもかなり完成されたAPS-C機だと思っていましたが、まだこれだけ機能追加できるんですね。これ、単に K-1 と K-70 の機能を挙げただけなんですが・・・すごく魅力的です。後は連写速度の向上がどこまで見込めるかです。10コマに届くといいのですが。

K-3II の後継のイメージは想定できました。問題はその後です。K-70 の直接の後継を作るのか、それとも別の入門機を挟むのか。小型軽量を追求するならミラーレスに太刀打ちできません。別の訴求方法としてコスト安を追及した機種を出すことを思いつきますが、それであれば K-S2 を活かしながら K-70 を最廉価機種として出すのが自然。でも現実はそうはなっていません。K-S1 が小型軽量の最廉価機種だったのですが、売れ行きがいいとは言えない状況だったことから、その轍を踏まない機種を投入することが求められます。

注目したいのが、K-70 に搭載されたライブビュー時の像面位相差AFです。あえて像面位相差を搭載してきたというのは、ミラーレスへの布石ではないかと考えました。もちろん、K-01 という商業的には失敗(マニアには受けた)という前例がありますからその轍を踏むことはしないだろうというのが普通の考えです。

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しかしながら、K-01 が発売されたのは4年前で当時と状況が変わってきています。雑誌などを見ると、プロカメラマンの認識としては将来的にミラーレスに移行するという意見が増えているように感じます。キヤノンニコンの二大勢力が OVFで頑張っている状態なので控えめな物言いですが、超望遠を使うような場面以外ではミラーレスで仕事したいという本音が垣間見られることがあります。雑誌のご意見番は年寄りが多いから、フルサイズのOVFを振り回すと疲れがくるんだろ?趣味の世界は違うんだよ!という暴論はさておき(笑)。

また、K-01 はある程度流用できる内部パーツを使い、外観を整えたという経緯があったため、ミラーレスとしての小型軽量を追及した設計になっているとは言いがたいです。(だが、それがいい。K-01 かわいいよ)Qシリーズがフェードアウト気味なのも考慮すると、小型軽量低コストを徹底したエントリーミラーレスを用意するというのは十分にありえます。キヤノンニコンが弱いAPS-C用小型単焦点レンズを十分に取り揃えていることや、ミラーレス陣営ではほぼ不可能なフルサイズやOVFへのステップアップを視野に入れたラインアップが揃っていることから、とりあえずペンタックスにしておけば(大砲レンズを振り回さない限り)なんでもできるよという説得の入口としてミラーレス機は必要だろうと思います。

そんなわけで、ミラーレスが出る前提で大胆にこういう予想になりました。

  上級機 中級機 普及機 入門機
2015 1H   K-3II K-S2 K-S1
2015 2H  
2016 1H K-1 K-70 K-S2
2016 2H
2017 1H K-3III ?
2017 2H K-02 ?
2018 1H
2018 2H K-90 ?
2019 1H K-3IV ?
2019 2H K-1 II ? K-03 ?

K-70 で像面位相差AFを載せてその意見を K-3III に反映し、先に発売されるシグマの sd Quattro の評判も見ながら、小型軽量低コストを追及した K-02 を発売するかどうかを考えるというところでしょうか。このロードマップであれば、K-1 や K-70 の機能を K-3IIIで集約させて、その一部を K-02 と K-90 に下ろすというわかりやすい流れにできそうです。

ミラーレスが発売されるとしても、EVFは乗らないと思います。K-70 ボディの初値が7万円を切るところからスタートしそうな状況を考えると、それより下位の機種はレンズキットで7万円程度、ボディは5万円程度の初値で売らないと棲み分けが難しくなりそうです。そうなると、EVFを載せて機能とコストを増やすよりも、初心者向けの機種としてシンプルに低価格機を提供することが答えになりそうです。

それにしても、K-70 の盛りだくさんなスペックとそれに反する低価格にはびっくりさせられました。価格戦略について K-1 からは従前と別物になっています。最初高くしておいて値引き勝負というのをやめて正常化を目指したようです。もう少し様子を見ないといけないですが、これからは初物買いしてもよさそうです。